ミュージカル

4月3日のレミゼ感想です。
この日は別所バル・今ジャベ。
ええと、一言で言うと
「ストイックな2人」
ええ、表の意味でも裏の意味でも(←ここのコメント、意味が分からない方は突っ込まれても返答しかねますので:笑)


もしかしたら以前も言っていたかもしれないのですが、別所バルって悪人じゃないですよね・・・。
多分、本当に「パン一個」を喰うに困って衝動的に盗んでしまったのが唯一の罪で、しかも「脱獄の罪」も集団脱走で、そのときすら
「こいつはトロイから絶対に捕まる。だからこいつが捕まっている間に時間稼ぎが出来て俺たちは逃げられるぜ」
と、最初から仲間から捨石にされる事決定で
「一緒に脱走しないか」
と話を持ちかけられて、結局仲間達は毎回バルジャン以外のほぼ全員がバルジャンが捕まったお陰で逃げおおせている・・・と言う事が何回か繰り返されたのではないかと。

で、今ジャベはそんなふうにバルジャンが捨石にされている事にもなんとなく気がついていながら
「カモにされる弱さを持つほうが悪い」
と大して同情もせずにいたんだけれど、ただ、バルジャンを本心から悪人とは牢獄時代には思っていなかったんじゃないかと思うのです。
むしろ、バルジャンが決まりごとを破って仮出獄許可証を破り捨て逃亡した事を知った時に初めて
「奴もやっぱり悪人だったか」
と認識したのかなー、と思ったのじゃないかと感じました。


バルジャンとジャベールの間に牢獄時代なんらの関係性はなく、ただお互いに
「囚人の一人」
「看守の一人」
という認識しかなかったのが、逃亡したバルジャンをジャベールが追うという関係性が出来て初めてお互いを個人として認識し始めた感じかも。


これは別所さんにしてみたら心外かもしれないのだけれど、最初にマドレーヌ市長として表れた時にジャベールを「あのときの看守だった奴」という認識は殆どしていないように見えた様な気もしたの。
というか、マドレーヌ市長とジャベール警部(あれ?あの時は警部か?)はお互いにビジネス上での付き合いで個人的な付き合いは全くなかったんだろうなーというくらい、本当に美しくお互いスルーだったような(笑)
で、バルジャンはジャベールが「ジャン・バルジャンを捕らえた」と言った時に初めて「そうだ、確か看守にジャベールと言う男がいた!」と思い出して警戒始めるというか(最初の自己紹介に全く持って意味がなし←むしろ自己紹介は観客のためのもの:笑)
更にジャベール側も、偽バルジャンを捕らえたときには「バルジャン」とは追いかけている悪人の一人という認識しかなかったのが、バルジャンが「私が24653だ」と告白したその時になってようやく
「善人の顔をしてこのオレをこれまで騙していたのか!この悪党め!」
と、その他大勢の悪人の一人ではなく、ジャン・バルジャンという個人として認識始めるというか・・・。


結局、法廷のシーン〜対決までのやり取りになるまでは、この2人の関わりというか関係性は観客以外、本人達すら知らずにストーリーが進んで行く感じだったのだ。
半ば観客だけがネタバレを知っている「志村、後ろ!!!」の感覚(←何じゃそりゃ)

ただ、これらは決して悪い意味での認識のなさというイメージがあるのではなく、それでも世界(舞台上)はきちんと確固とした一つの流れや雰囲気が維持された状態で進められて行ったので、キャラクターとしてのスルーはあっても役者同士の演技上のすれ違いという感じは全くなかった。
バルジャンがマドレーヌの時にジャベールに気付いていないようだというジャベール超スルーな感じに対して、ジャベールにとってもバルジャンとは、目の前にいながら逃してしまった悪党の一人であったという苦い過去がこだわりを持たさせる存在ではあるけれど、バルジャンを追いかける事がジャベールの全てではなくて、その他にもテナ達を取り締まったり、革命を起こすぞーと血気盛んな学生達を取り締まったり、やらなければならないお仕事がたくさんある中の一つでしかなかったというか・・・。
むしろ追う者と追われる者がある種本当に「職務」上でのやり取りであったからこそ砦でバルジャンの人間性(?)を見てしまった事がジャベールに迷いをもたらせてしまったようだったというか・・・
あ、なんか言いたいことが混乱してきたぞ。
落ち着け、私。
ジャベールにとって悪人は「完全悪」でなければならないと思っている印象は実はこの日の今さんからはあまり感じられなかったの。
それは、もしかしたら「レ・ミゼラブル」のジャベールとしては色々あれなのかもしれないけれど・・・
自殺に至る経緯にしたって、バルジャンに助けられた事はきっかけの一つではあったけれど、もしかしたらその後砦に戻って学生達の死体を目にして(彼らが血気盛んに粋がっていた所もジャベールは知っていたわけだし)結局バルジャンだけでなく学生の一人であるマリウスを助けてやりたいと言う衝動にも駆られたりとかしていたんじゃないかとか・・・
自分が「悪人」だと信じていた者の行動が分からない事より、自分が義務でやらなければならない事と、自分自身がやりたい事との矛盾点がジャベールを追い詰めていったのかなあ、とか、そんなふうに思っていたりして・・・。


ある種、バルジャンもジャベールも自分自身や対人関係や世界に対して在り方はとても薄かったのだけれど、なんかねえ、2人ともそれはそれで人間的でいいな〜とか思ってしまったのです。
バランスも良かったのかのう。
どちらかがどちらかに対して何か深い気持ちを押し込むようなところもなく、とても見やすい統一した世界観が良かったかも。
まあ、ベストかと言われると・・・(苦)


あー、今回はこの一回しか観劇予定がないので今年度のレミゼはこういう感想で終了です。
この後勢いがあったら裏にも行くかも。
ご存知の方、お付き合いくださいませ(笑)