トーマの心臓(Seele)

全体の印象は「ああ、ライフの原点なんだな〜」と・・・。
面白さ(わかりやすさ?)やエンターテイメント性で人に勧めるなら、この作品よりもドラキュラとかヴァンパイアレジェンドの方がずっとライフを分かってもらえると思うのですが、どちらかというとこの作品は最近のライフの作品をいくつか見ていて、ライフにある程度(たとえおちょくりであろうが←オイ)好意を持って見れる方に
「一度見てみたら?」
と勧められる作品かなあと思います。
ええと・・・宝塚初心者にいきなりベルバラは今更勧めない心境というか(その例えもどうか)


この作品を演じた事でライフの方向性が定まったというのが納得できた気がしました。
ただ男同士で愛情だのを表現するという方向性を定めたという事ではなくて、もっと大枠というか、もしくは根本。
ライフ作品の多くに流れる、人の孤独性とその救済(もしくは拒絶)や、無償の愛(もしくは求愛)や、寂しさ故にとってしまった残酷な行動。人は寂しく、孤独で残酷だけれど、相手の全てを受け入れて愛する事で、許しを与え合う事もできる美しさがあること。かと思えばどこまでも残酷になりきれる、そういった人の恐ろしい姿から目をそらさないで(でも耽美に?)描ききっている事にも通じていたり・・・
あー・・・何だか書いていて段々分からなくなってきたが(コラ)
これまでライフで見せてもらっていた様々な作品の主題のどれもが、この「トーマの心臓」には詰まっていると思います。



さて、個人感想
ユーリ(山本さん)
あちこちで言っているので今更隠す事でもないのですが、山本さん好きです。はい。
で、好きながらに初っ端からラストまで突っ込みどころ満載で・・・特に動き(笑)
座るな!(内股になるから)
よろけるな!(内股になるから)
一歩近づくな!(内股になるから)
人を避けるな!(内股になるから)
何だその構えは!!!(フェンシング)
とどのつまり・・・
動くな!!!!(ファンです)
いやもう、どのシーンでもくねくねした下半身が気になって、何かって言うと笑いが込み上げて仕方なかったのですが(くどいですがファンです)、そんな動きを差し引いてもこういった心の中に闇を抱えている役は山本さん絶品だなー、と思います。
・・・欲目入っていますか?やっぱり。
山本さんの場合、精神的な葛藤が演技として見えやすいのが良いのう、と個人的には思うのですが・・・。
ダークサイド面に傾いてしまった自分、そこに悦楽を感じている自分を認め、同時に嫌悪しているという二重構造とか。
そもそものところで山本ユーリはサイフリートに興味を示すことが無条件で納得させられてしまう。
人の弱い部分の多面性を表現するのが上手いのう、と思ってしまうのです。(逆に百夜行とかOZのような、確立した一本の強い精神力とかを問われる役は微妙なのを感じてしまいましたが(笑))
あと、個人的に山本さんでよいなあ、と思うのは(ライフならではといいますか)舞台上に既に実態としてない物を愛する様子。
女の子だったり、物だったり、父親だったりの実際に存在するものに焦がれる様子より、求める愛の形が抽象的なものだったり、トーマのように既にいない存在だったり、それが一体どういうものか、半ば観客の想像に任せる形になる実態のないぼんやりとした存在に焦点を当てて「愛している」という姿が何故か説得力があって綺麗だなあ、と思うのです。
さらに、舞台上での山本さんには「友人と楽しく遊ぶ」姿は見えても「我を忘れて一緒に羽目を外す」という様子が想像つかない辺りや、同年代の中で少し落ち着いている少年なんだな、と思わせるあたりや、勉学もただ頭が良いのではなく、見合う努力をした分だけ成績を上げているんだろう、という、言葉では表現されていない様子を雰囲気でまとっている感じが「委員長のユリスモール」という大前提の立場をある程度無条件に納得させてくれたように思う。
動きさえ改善されれば(くどい)本当に当たり役なんだろうなー、と思います。


オスカー(高根さん)
ああ、本当に1歳しか違わないんだろうな(笑)
しかも、精神年齢とかは実際皆とそれ程変わらないのに、皆から「彼は一つ年上なんだよ」という目で見られてしまったために「俺は1歳年上なんだから」と半ば自己暗示のような形でちょっとだけ兄貴な役を皆の前で演じているんだろうな。
という、感じ。
相変わらずな噛み癖にもう笑うしかない感じでしたが(コラコラ)私はこのオスカー、好きです。
なんかもう、色々と不器用そうなんだもん。
なのに同学年の友達からはやっぱり「あいつは一つ年上だから」ってことだけで一目置かれてしまって、なかなかいろいろな事がうまく行っていないんだろうな〜
とか
きっと(同室だし)ユーリにはいろいろ情けない事とかもばれているのに、全部を受け入れてくれている事に物凄い惹かれている、ていうか、ユーリのこと大好きなのに、自分の思うとおりには気持ちを伝え切れていないんだろうな〜
とか
校長との駆け引き、自分が思う以上に上手く行っていないんだろうな〜
とか。
いやあ、愛おしい(大笑)


レドヴィ(林さん)
図書館の小人さん(笑)
なんかこう、トーマの詩を黙って守りつつ、こっそり壊れかけた本を直してくれていたりしてそう。
そうして、時が来た時にユーリにあの本を渡すのです。そんな役割なのです。
ユーリが去ったあと、いつの間にか姿を消していて、そしてまたいつかあの図書館に人知れず思いを連ねた言葉が残されたときに、それをこっそりと守ってくれるのでしょう。
だから最後にはちょっとしたお菓子とミルクをあげなければならないのかしら・・・という感じに、小人さん。(もしくは妖精さん?)
なんだか、レドヴィという学生は本当にいたのかな、と感じてしまう(悪い意味ではなく)少し不思議な雰囲気の学生さんでした。
レドヴィ、というより、林さんのトーマの詩の暗誦がとても穏やかで好きです。


アンテ(吉田さん)
憎らしいのに、憎めない、可愛らしいアンテでした。
吉田君、今更だけど本当にそつのない演技をしてくれると思います。
あまりにそつが無くて憎たらしくなるくらい(オイ)
地声のあの独特の高さがネックになっているのかもしれないのですが、ライフではないところで演技を見てみたいと熱望しております。
・・・でも、ライフにちゃんと帰ってきてね(笑)


サイフリート(舟見さん)
・・・・・・・・・・SM・・・・・ゴフッ・・・・・・
なんかもう、素晴らしく、見事に、腹の底から度肝を抜かれました!
細いなー!!!!!(そこ!?)
彼だけ世界が全く違うぜ!ホントに!!!!
フナミン、新しい世界を開拓してしまいましたのう・・・・帰ってきてね(笑)



と、ザーッとこんな感じかしらのう。
気付けば山本さんを随分語ってしまいました。あかんあかん。
さて次はLeben。
奥田・曽世チームです。
それにしてもアヴェ・マリアはもう一生分聴かせてもらった感じでかなりお腹いっぱい・・・